マネーボール Moneyball

マネーボール


作品情報
製作年 :2011年
監督  :ベネット・ミラー
キャスト:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン

あらすじ
2001年ポストシーズン、オークランド・アスレチックスはニューヨーク・ヤンキースの前に敗れ去った。オフには、スター選手であるジョニー・デイモン、ジェイソン・ジアンビ、ジェイソン・イズリングハウゼンの3選手のFAによる移籍が確定的。アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)となっていたビーンは、2002年シーズンに向けて戦力を整えるべく補強資金を求めるも、スモールマーケットのオークランドを本拠地とし、資金に余裕の無いオーナーの返事はつれない。
 ある日、トレード交渉のため、クリーブランド・インディアンズのオフィスを訪れたビーンは、イエール大学卒業のスタッフ、ピーター・ブランドに出会う。ブランドは各種統計から選手を客観的に評価するセイバーメトリクスを用いて、他のスカウトとは違う尺度で選手を評価していた。ブランドの理論に興味を抱いたビーンは、その理論をあまり公にできず肩身の狭い思いをしていた彼を自身の補佐として引き抜き、他球団からは評価されていない埋もれた戦力を発掘し低予算でチームを改革しようと試みる。

みどころ
・貧乏球団が金持ち球団をやっつける
2000年代初頭のメジャーリーグは、財力のある球団とそうでない球団の格差が広がり、良い選手はことごとく金満球団へ引き抜かれる状況が続いていた。貧乏球団のオーナーからは、「もはや野球はスポーツではなく、金銭ゲームになってしまった」という嘆きの声が上がっていた。そんな中、リーグ最低クラスの年俸総額でありながら、黄金時代を築いていたチームがビリービーン率いるアスレチックスである。毎年のようにプレーオフ進出を続け、2002年には年俸総額が1位のニューヨーク・ヤンキースの1/3程度だったにもかかわらず、全球団で最高の勝率を記録したのだ。アスレチックスはなぜ強いのか?多くの野球ファンが感じていた疑問の答えは、セイバーメトリクスを用いたチーム編成だった。

チーム編成、および選手獲得の基準は以下の通りである。状況(運)により変動する数値は判断基準から排除され、本人の能力のみが反映される数値だけに絞り込んで評価することが最大の特徴。
出塁率: 打率ではなく、四死球も含めた出塁する率。
選球眼: ボールを見極め、四球を選び、出塁率を上げるために必要な要素。投手により多くの投球をさせる能力、言い換えれば「粘る力」は相手投手の疲弊を招き、四球を得る確率の向上に繋がるためである。
バント・犠打: ワンアウトを自ら進呈する、得点確率を下げる行為と定義して、完全否定した。犠打で進塁させることで上がる得点の期待値は、そのまま強攻させるより小さいためである。
といったことが挙げられる。

旧来の、スカウトの暗黙知(経験や勘)による選手評価を全否定し、客観的データ主義を徹底した。体格やバッティング・ピッチングフォームなどの外見は考慮しない。あくまで、前述の要素を満たす選手を獲得することに注力した。

・欠陥品・傷物と呼ばれた選手たち
アスレチックスが獲得する選手は、他球団で評価されない「欠陥品」・「傷物」とされた選手である。この欠陥とは他球団の価値基準においてであり、アスレチックスの基準においては必ずしも問題とはならない。前述の能力を有していれば、これらの欠陥はほとんど問題にされない。 例えば、ボストン・レッドソックスの捕手だったスコット・ハッテバーグは、捕手として致命的な利き腕に怪我を負い、手術したため選手生命は絶望的な評価をされ、年俸が低かった。しかし、高い出塁率を残していたことをアスレチックスに注目され、アスレチックスに内野手として獲得された。その結果、主軸打者として活躍した。
野球人生を諦めていた選手たちが、ビーンのおかげで、再起を果たし活躍する姿は非常に感動的である。

・ビーンの過去
ビーンは、かつて超高校級選手としてニューヨーク・メッツから1巡目指名を受けたスター候補生だった。スカウトの言葉を信じ、名門スタンフォード大学の奨学生の権利を蹴ってまでプロの道を選んだビーンだったが、自身の性格も災いして泣かず飛ばずの日々を過ごし、さまざまな球団を転々とした挙句、引退。スカウトに転進し、第二の野球人生を歩み始める。
ビーンが、セイバーメトリクスに固執するのは、スカウトにおだてられて人生を棒に振ってしまった過去に加え、ビーンのようにスター選手としてスカウトされながらも、全く活躍できない若者が山ほどいるという現実を変えたいと思う姿に心を打たれる。

ファンタスティック Mr.FOX Fantastic Mr. Fox



作品情報

製作年 :2009年
監督  :ウェス・アンダーソン
キャスト:ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、ビル・マーレイ、ウィレム・デフォー、オーウェン・ウィルソン

あらすじ
Mr.フォックスは盗みをしながら暮らしていたが、妻のMrs.フォックスとちょっと変わり者の息子アッシュのために、盗みから足を洗い、今は穴暮らしをしながら新聞記者として働く日々。だが、「もっといい暮らしをしたい!」そんな欲求にかられた彼は、丘の家を購入することに。しかし丘の向こうには意地の悪い3人の人間の農場主(ビーン、ボギス、バンス)が住んでいた。憧れの家へ引っ越し、人間に近づいたMr.フォックスは野生の本能が目覚めてしまい、人間たちの飼育場から昔のように獲物を盗むことに熱を上げていく。日々、獲物を盗まれる人間たちの怒りはついに頂点に達し、結束した3人はトラクターを使って根こそぎ丘を掘り返しはじめた。父親として、"ファンタスティック"に生きたいMr.フォックスと土の中で生活する彼らの仲間たちは、野生の本能と誇りをかけ、人間たちと戦いはじめる!

みどころ
・こだわりのストップモーションアニメ
 原作の「すばらしき父さん狐」は「チャーリーとチョコレート工場」の著者ロアルド・ダール。
 ウェス・アンダーソンがどうしても撮りたかった、CG時代にあえて挑んだこだわりのストップモーション・ピクチャーと銘打つだけあり、構想10年 撮影期間2年 総カット数は、125,280にも及ぶ。人形ながらも表情が豊かで、CGとは違った懐かしさを感じられる映像である。もちろん、オフビートな雰囲気やとぼけたユーモア、センス抜群の美術などウェス・アンダーソン独自の世界観もしっかりと表現されており、ファンならずとも誰にでもオススメできる。
 クライマックスのアクションシークエンスの出来も秀逸で、大興奮間違い無し。
 他人と違うことに悩む息子に、自分らしく生きることの大切さを体現するフォックス夫妻の姿は微笑ましくも、感動的。

・こだわりのサントラ
 独自のビジョンを表現するために、脚本と監督はもとよりカメラワーク、プロダクション・デザインや衣装に至るまで熟慮するアンダーソンは、当然、劇中音楽の選曲にも気をつかっているザ・ビーチ・ボーイズ、ボビー・フラー・フォー、バール・アイヴス、ジョルジュ・ドルリュー、ローリング・ストーンズらの楽曲に加え、アレクサンドル・デプラが作成した楽曲を含んだサントラは、必聴である。

・超豪華な声優陣
 アンダーソン作品にはたびたび出演する常連俳優、盟友のオーウェン・ウィルソン、ビル・マーレイ、ウィレム・デフォー、ジェイソン・シュワルツマン等に加え、ジョージ・クルーニーやメリル・ストリープといった大御所も肩を並べている。


ザ・シンプソンズ MOVIE The Simpsons Movie

東電の汚染水垂れ流しが問題の今こそ観るべき作品?!


作品情報

製作年 :2007年
監督  :デヴィッド・シルヴァーマン
脚本  :ジェームズ・L・ブルックス、マット・グレイニング

あらすじ
 アメリカの田舎町スプリングフィールドで暮らすシンプソン一家。ある日ダメ親父のホーマーは、バーガーショップで助けたブタを飼い始め、一風変わった愛情を注ぐようになる。
 その頃、湖の汚染が危機的水準に近づいたため、町は湖にごみを捨てることを禁止した。ブタの排泄物を貯めていたサイロを処理場に搬入しに行ったホーマーは、処理場が混雑していたため、禁止を無視しサイロを湖に捨ててしまう。 その結果、さらに汚染が進み強烈な汚染物質を撒き散らし始めた湖への対処を迫られたアーノルド・シュワルツェネッガー大統領は、スプリングフィールドをドームで覆い隔離するよう命じた。ドームで覆われ外界と遮断されたスプリングフィールドは、雨も降らず風も吹かない地獄と化したのだった。

見どころ
・シンプソンズ待望の映画化
 シンプソンズは、アメリカ・FOXテレビで、1989年の放送開始から500話以上が放映されており、アメリカアニメ史上最長寿番組として知られ、2009年には20周年を迎えた。2012年2月19日に第500話目のエピソードが放映された。現在は60か国以上で20か国語に翻訳され、全世界で毎週6000万人以上が視聴している。エミー賞、ピーボディ賞受賞作品。
劇中の人間関係や各方面に及ぶ社会ネタに対するシニカルな描写が常時繰り返される一方、能天気なオプティミズム(楽天主義)と主人公一家の家族愛を根底に据えており、乾いたユーモアをあまりストレスなく楽しませる趣向になっている大人向けのアニメ。そんなシンプソンズが、総勢11人の脚本家によるブラックな笑いをたっぷり含み、満を持ししてついに映画化された。

・おなじみのキャラクター
 主人公であり、家族の大黒柱のホーマーは、家族に対する愛情はとても強く、それを示す行動に出るがほとんど空回りに終わる。子供の頃に鼻から突っ込んだクレヨンが脳に刺さったのが原因で、頭が悪い(IQ55)。そんな彼が、スプリングフィールドの原子力発電所で安全管理官として働いているといった登場人物の設定はおなじみである。

・大スターが多数カメオ出演
 グリーンデイや、シュワルツェネッガー、トム・ハンクスなど大スターや有名人が、実名でカメオ出演したり、さまざまな映画のパロディが随所にちりばめられているといった、芸能ネタも楽しみの一つ。

 

恋愛睡眠のすすめ The Science of Sleep

女性にもオススメの作品


作品情報

製作年 :2006年
監督  :ミシェル・ゴンドリー
キャスト:ガエル・ガルシア・ベルナル、シャルロット・ゲンズブール

あらすじ
 仕事も恋愛も何一つ上手くいかずパッとしない人生を送ってきたステファンは、父の死をきっかけに、長年暮らしていたメキシコから母のいるパリに帰郷する。そんな時、ステファンの部屋の隣にも新しい住人が引っ越してくる。引越し作業中に、運搬屋の不注意でケガをしたステファンは隣人ステファニーに手当してもらうが、引っ込み思案でシャイなため隣に住んでいることさえ言えない。やがてステファンは、クールで知的なステファニーを好きになるが、なかなか恋は上手くいかない。そんな現実から、せめて眠っている間だけでも彼女に会うため、理想的な夢ばかり見るようになる。夢の中でのステファニーとの恋愛は完璧な形で展開していく。だが次第に、ステファンは夢での出来事を現実だと思い込むようになっていって。

見どころ
・ステファンのイマジネーション
 ステファンが逃げ込む夢想の世界は、とても可愛らしく、ホンワカとする。蛇口をひねればセロファンの水が飛び出るし、空にはぬいぐるみの綿でつくった雲が流るといったように。シュヴァンクマイエルのような、アート系のアニメーションが好きな人にとって、またそうでない人にとっても、ステファンのイマジネーションに心を動かされる。
 孤独の中で想像力が豊か、周囲と満足なコミュニケーションが取れない不器用なんだけれど、母性をくすぐる男性版アメリのようなステファンを、ガエル・ガルシア・ベルナルが好演している。

・ゲンズブールの魅力
 少し突き出た下唇、とがった顎、ふてくされたような、つんとした表情、飛び抜けて美しいというわけではないが、妙に惹きつけるものを持っている女優。どこにでもいそうで、どこにもない類稀な個性を持ったゲンズブール。そんな彼女が、クールで知的、年上のお姉さんを魅力たっぷりに演じている。

・サントラのすすめ
 テーマ曲の「Coutances」や、「Golden pony boy」など、PV出身のゴンドリーによる選曲も、映画の雰囲気にマッチしており、サントラだけでも聴きごたえがある。