羊たちの沈黙 The Silence of the Lambs


1991年公開のアメリカ映画。監督はジョナサン・デミ。トマス・ハリスの同名小説をテッド・タリーが脚色。主演はジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス。第64回アカデミー賞 作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞受賞作品。

あらすじ
若い女性の皮膚を剥ぎ落とし、その死体を川に流すという残忍な連続猟奇殺人が発生した。
犯人の仮称を冠し“バッファロー・ビル事件”と呼ばれるこれを解決するため、FBI訓練生のクラリスは、クロフォード主任捜査官からある任務を課される。それは、元は天才的な精神科医であり、自分の患者を食したため現在は州立精神病院に措置入院されているレクター博士を訪ね、バッファロー・ビルの精神状態を解明させるというものだった。
クラリスから依頼されたレクターは、その引き換えとしてクラリスに、彼女自身の過去を語らせる。

解説
映画史上最高の悪役として、ダースベイダーを押さえて、見事一位に輝いた、ハンニバル・レクター博士。本作での出演時間はたったの10分程度。
残虐な行為の最中にも関わらず、心拍数は平常時と変わらない、人間の本能の部分すらコントロールしているという、非常に恐ろしい人物として描かれているレクター博士。しかし、レクター博士は大変な紳士でもあり、非常に高度な知的能力を持ち、専門の精神医療にかんする知識だけでなく、歴史、文学、美術、音楽などにも詳しいという面も持ってるという複雑な人物造詣が興味深い。
 上司のクロフォードやレクター博士が、潜在的に父性を求め続けるクラリスにとって父親的存在として描かれ、一方でビルは、男性性を否定するために女性の皮を剥いで、自分を覆うという胎内回帰願望とも言える母性を求めているという対立が、密かに描かれている。
 少女時代に子羊を助けられなかったことで、父親を失ったときと同じような無力感を再び味わったクラリスにとって、バッファロゥ・ビルに無惨にも殺される被害者を救えないことは、三度、無力感を味わうことになる。クラリスにとって、子羊=犠牲者。だから、レクター博士は、ずっと悩まされてきているトラウマを乗り越えるためには、「キャサリンを助けられたら、羊の悲鳴は止むと思うか?」と尋ねる。意味深なタイトルの意味はここにある。

原作も合わせて読むことをオススメ

『羊たちの沈黙』トマスハリス




テーマ曲『The Silence of the Lambs theme