パルプフィクション Pulp Fiction



1994年のアメリカ映画。クエンティン・タランティーノ監督による作品である。1994年のアカデミー賞では7部門にノミネートされ、そのうち脚本賞を受賞した。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞した。アメリカの低級犯罪小説であるパルプマガジン的なストーリーをコンセプトに殺し屋たちの話を3つの物語が交錯するように語られるコメディあり、ヴァイオレンスありのドラマ。

解説
 おおまかなストーリーとしてはひとつのマフィアの話となっており、その中にいる人間の短編ストーリーとなっている。本作は時間的な順序とは異なった流れで構成されており、時系列シャッフルを取り入れた作品である。

タランティーノについて
レンタルビデオショップ店員時代に荷大量の映画に埋もれ働きながら脚本を書いた。この当時に培った映画の知識が後の映画制作に役立っている。主にアジアを中心としたマニアックな映画・日本のアニメ・音楽に精通している。シネ・フィルを自称する。
タランティーノの作風は、自身の映画趣味が随所に見受けられる。パロディ・オマージュ・引用のほか、千葉真一やパム・グリアなどタランティーノが熱狂的なファンである俳優を出演させている。
「意味のない話」を延々と続ける演出が特徴である。なお2007年の『デス・プルーフ in グラインドハウス』では「意味のない話」がストーリーの半分を占めている。


サントラ
既存の楽曲を使用することが多いタランティーノ作品。本作もサントラの全てが既存の楽曲で占められている。ヴァイオレンスなシーンで、おとぼけなBGMが流れたり、ジョン・トラヴォルタ復活となった、有名なダンスシーン等、サントラなしにはタランティーノを語れない。作品同様、サントラも文句なしの傑作。




オープニング『Pumpkin and Honey Bunny [Dialogue]/Misirlou

スリング・ブレイド Sling Blade



1996年制作のアメリカ映画。ビリー・ボブ・ソーントンはこの作品で、監督・脚本・主演を兼ね、アカデミー脚色賞を受賞した。

あらすじ
母親の浮気現場を目撃し、母とその相手を殺害した知的障害者のカール。25年間の精神病院生活を終え、故郷の町に帰ってきた彼は、そこで父親のいないフランクという少年と親しくなる。だが少年の母親が恋人の暴力に悩んでいる姿を見た時、彼の中である決意が芽生える...。

概要
かつて母の浮気相手を殺害した男と孤独な少年との交流を通し、人の心の在り方を綴る。淡々と心に響くストーリーを寓話的タッチで括ったソーントンの手腕は見事。ソーントン自身の巧みな演技も秀逸もの。
一見、淡々としていて、特に工夫が無いようにも思えるが、導入から衝撃的なクライマックスまでの見事なストーリー・テリングは全く飽きることがない。
最初の殺人から、病院で聖書を学んだカールが、初めて自分が悪いことをしたと考える。退院して、様々な人々、少年との交流から人間的に成長していく姿は、穏やかで温かい描写で描かれており、観る者の心を癒す。
カールがクライマックスで下す決断は、非常に重く、いつまでも観客の心に残り続けるだろう。




メインテーマ『Asylum』

ぼくのエリ 200歳の少女 Let the Right One In




2008年のスウェーデン映画。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによる2004年の小説『MORSE -モールス-』を原作者自らが脚色した吸血鬼映画である。

あらすじ
 ストックホルム郊外に住む12歳のオカルト好き少年オスカーは、内気で友達が居ない、いじめられっ子である。ある日、彼の家の隣にエリという名の同い年の女の子が引っ越してくる。学校に通わず、昼間は外出もしないミステリアスなエリにオスカーは恋心を抱くようになった。同じころ、町では失踪・殺人事件が相次いで発生。やがてオスカーはエリの正体が不老不死のヴァンパイアであり、一連の事件の犯人であることを知る。

概要
肝心なシーンにボカシを入れる映倫の作品の理解度に、憤りを隠せない。ちゃんと観たのか? 深い孤独を抱えていた12歳の少年が、エリと出会いぎこちなくも絆を深め合っていく展開は、静謐な映像や音楽の効果も相俟って非常に美しくも繊細、そして切なく表現されている。また、硝酸をかけて自殺したホーカンの存在が本作を一段と深みのあるものにしており、ヴァンパイアに恋をした男がたどる末路を暗示する役割を果たしている。
2010年にマット・リーヴス監督、コディ・スミット=マクフィーとクロエ・グレース・モレッツ主演で『モールス』としてリメイクされた。

サントラ
音楽を作曲したのは、ヨハン・ソーデルクヴィスト。スザンネ・ピア監督作品ある愛の風景」「アフター・ウエディング」で知られる。静謐で美しいイメージ、繊細なテーマが印象的。フルオーケストラによる演奏であるため重厚感があり聞き応えがある。残酷描写を含むホラー作品が、ドラマとして厚みがあり、美しく仕上がった傑作サントラ。







テーマ曲『main theme』

ソーシャルネットワーク The Social Network



2010年のアメリカ映画。SNSサイトのFacebookを創設したマーク・ザッカーバーグらを描いたドラマ。原作はベン・メズリックが著したノンフィクション作品『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』。


あらすじ
2003年。ハーバード大学に通う19歳の学生マーク・ザッカーバーグは、親友のエドゥアルドとともにある計画を立てる。
それは友達を増やすため、大学内の出来事を自由に語りあえるサイトを作ろうというもの。 閉ざされた“ハーバード”というエリート階級社会で「自分をみくびった女子学生を振り向かせたい」そんな若者らしい動機から始まった小さな計画は、いつしか彼らを時代の寵児へと押し上げてゆく。 若き億万長者は何を手に入れ、そして何を失うのか―? 

概要
株価下落が投資家の怒りを買ったフェイスブックだが、映画の方は、Rotten Tomatoesでは、96%(268名中258名)の評論家が本作に肯定的な評価を下し、また平均点は10点満点で9.0点となった。また、Metacriticでの平均スコアは、42のレビュー中好意的なものが41で、平均点は100点満点中95点だった。『シカゴ・サンタイムズ』の映画評論家のロジャー・エバートは4つ星満点を与えた。また、『ローリング・ストーン』誌のピーター・トラヴァースも2010年初めてとなる4つ星満点を与え、「2010年の最高傑作」と評した。『ハーヴァード・クリムゾン』紙では「完璧である」と評され、5つ星が与えられたクエンティン・タランティーノは2010年のベスト映画として、トイ・ストーリー3に次いで本作を挙げた

サウンドトラック
2010年6月1日、トレント・レズナーとアッティカス・ロスが本作の音楽を手掛けることが発表された。サウンドトラックの内5曲を無料でダウンロード可能である。また、映画のエンドクレジットではビートルズの「ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン」が流れるが、これはサウンドトラック盤には収録されていない。
 7月15日には劇場で全長版予告が流れ、レディオヘッドの楽曲「クリープ」スカラ・アンド・コラシニ・ブラザーズがカバーしたものが使われた。
 ちなみに、サントラ未収録のクラブで流れていた曲は、
Dennis de LaatのSound Of Violence

・こちらもおすすめ
 『フェイスブック 若き天才の野望
       (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた) 




テーマ曲『Hand cover bruise』


クラブで流れてた曲『Sound of violence』Dennis de laat

羊たちの沈黙 The Silence of the Lambs


1991年公開のアメリカ映画。監督はジョナサン・デミ。トマス・ハリスの同名小説をテッド・タリーが脚色。主演はジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス。第64回アカデミー賞 作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞受賞作品。

あらすじ
若い女性の皮膚を剥ぎ落とし、その死体を川に流すという残忍な連続猟奇殺人が発生した。
犯人の仮称を冠し“バッファロー・ビル事件”と呼ばれるこれを解決するため、FBI訓練生のクラリスは、クロフォード主任捜査官からある任務を課される。それは、元は天才的な精神科医であり、自分の患者を食したため現在は州立精神病院に措置入院されているレクター博士を訪ね、バッファロー・ビルの精神状態を解明させるというものだった。
クラリスから依頼されたレクターは、その引き換えとしてクラリスに、彼女自身の過去を語らせる。

解説
映画史上最高の悪役として、ダースベイダーを押さえて、見事一位に輝いた、ハンニバル・レクター博士。本作での出演時間はたったの10分程度。
残虐な行為の最中にも関わらず、心拍数は平常時と変わらない、人間の本能の部分すらコントロールしているという、非常に恐ろしい人物として描かれているレクター博士。しかし、レクター博士は大変な紳士でもあり、非常に高度な知的能力を持ち、専門の精神医療にかんする知識だけでなく、歴史、文学、美術、音楽などにも詳しいという面も持ってるという複雑な人物造詣が興味深い。
 上司のクロフォードやレクター博士が、潜在的に父性を求め続けるクラリスにとって父親的存在として描かれ、一方でビルは、男性性を否定するために女性の皮を剥いで、自分を覆うという胎内回帰願望とも言える母性を求めているという対立が、密かに描かれている。
 少女時代に子羊を助けられなかったことで、父親を失ったときと同じような無力感を再び味わったクラリスにとって、バッファロゥ・ビルに無惨にも殺される被害者を救えないことは、三度、無力感を味わうことになる。クラリスにとって、子羊=犠牲者。だから、レクター博士は、ずっと悩まされてきているトラウマを乗り越えるためには、「キャサリンを助けられたら、羊の悲鳴は止むと思うか?」と尋ねる。意味深なタイトルの意味はここにある。

原作も合わせて読むことをオススメ

『羊たちの沈黙』トマスハリス




テーマ曲『The Silence of the Lambs theme

ブレードランナー Blade Runner



1982年公開のアメリカ映画。フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作とし、その卓越した近未来描写から非常にファンが多い。単なるSFではなくフィルム・ノワールの要素も持つ。1993年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。

あらすじ
 2019年、宇宙開拓の前線では遺伝子工学により開発された「レプリカント」と呼ばれる人造人間が、奴隷として過酷な作業に従事していた。レプリカントは、外見上は本物の人間と全く見分けがつかないが、過去の人生経験が無いために「感情移入」する能力が欠如していた。ところが製造から数年経てば彼らにも感情が芽生え、人間に反旗を翻す事態にまで発展した。しばしば反乱を起こし人間社会に紛れ込む彼等を「処刑」するために結成されたのが、専任捜査官“ブレードランナー”である。
 人間そっくりなレプリカントを処刑するという自らの職に疑問を抱き、ブレードランナーをリタイアしていたデッカードだったが、その優秀な能力ゆえに元上司ブライアントから現場復帰を強要される。捜査の為にレプリカントの開発者であるタイレル博士に面会に行くが、タイレルの秘書レイチェルの謎めいた魅力に惹かれていく。


 史上最高のSF映画は? という問いに対し、真っ先に浮かぶのが『ブレードランナー』だ。
従来のSF映画にありがちだったクリーンな未来都市のイメージを打ち破り、環境汚染にまみれた酸性雨の降りしきる退廃的近未来都市像を舞台に、重厚でハードボイルドな物語が展開される。
人間を人間たらしめているものは何か?という哲学的なテーマを持ち、人間とアンドロイドのロマンスが盛り込まれ、類稀な映像センスに満ちた傑作。
 監督リドリー・スコットは、ヴァンゲリスの存在無くして、ここまでの「高み」には至れなかったと公言。『炎のランナー』で有名な、ヴァンゲリスによるサントラもおすすめ。

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エンドロール『End theme』vangelis

日米で明暗が分かれる夏興行

 米国では五月から夏興行が始まり、ヒット作が相次いでいる。「アベンジャーズ」が興収6億ドル超と歴代興行ランキング三位を記録したのを皮切りに、「マダガスカル3」「メリダとおそろしの森」「アメイジング・スパイダーマン」が興収2億ドルを超える大ヒット。「ダークナイト・ライジング」は興収4億ドルを突破。
 上位五本の総興行収入は17億2700万ドルで、昨年のトップ5に比べ約40%増と大幅に伸びている。
 好調の理由は、映画人口を支える10代〜20代前半の男性向けアクション映画が充実する一方、ファミリー客にはCGアニメーションが受けているため。
 一方、日本では「BRAVE HEARTS 海猿」「劇場版ポケットモンスター」と前作並の動員を伸ばしたり、「おおかみこどもの雨と雪」のように「興行で大化けする可能性がある」という期待通りのヒットを記録する作品もあるが、昨年と比べると物足りなさが残る。昨年は「ハリーポッターと死の秘宝PART2」の興収96億円を筆頭に、興収40億円超えが3本、30億超が1本あり、興収トップ5の総興収は257億円。一方、今年のトップ5の総興収は173億円。
 要因はいくつかある。「海猿」がシリーズ初の夏公開となり「従来の20代〜30代のファンのほか、家族客も集めて大幅に興収を伸ばすのではないか」と期待されたが、夏効果があまり見られないこと。「アメイジング・スパイダーマン」が興収32億円と期待はずれの成績を推移していること。「メリダ〜」の興収が10億円に届かず伸び悩んでいることなど。
 全国的に学校の夏休みは9月2日のところが多く、映画界では、8月最終週に期待を寄せている。